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【MBA】Microsoft本社で活躍する日本人

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アメリカのビジネススクールMBAを取得後、日本マイクロソフトへ入社。2013年からMicrosoft米国本社に勤め、グローバルマーケティング担当し、世界で活躍する日本人にインタビュー。

 

Microsoft米国本社

グローバルマーケティング担当

石坂 誠

 

プロフィール

2002年早稲田大学法学部卒業。新卒でNECに就職し、化学業界向け法人営業を担当。2007年米国ユタ州にあるBYU(ブリンガムヤング大学)にてMBAを取得。その後、日本Microsoftにてプロダクトマネジャーとプラットフォーム戦略を担当。2013年より米国Microsoftにてオープンソースならびにクラウドビジネスの企画、営業戦略を経て、現在グローバルマーケティングを担当。

 

ここから学べるMBAの原則

  • リーダーシップ(次世代リーダー論)

 

結論

成功=自分の才能を最大限に伸ばしているか+与えられた資源を使って最善の奉仕をしているか

 

インタビュー:

ー自伝を書くとしたらタイトルは?

石坂氏: 新約聖書に出てくる「愛されるよりも愛する方が幸いである。」という言葉が好きで、これが自伝のタイトルになるような生き方が出来たらうれしいです。私の一番の根本にあるのは「幸せになりたい」という思いで、「幸せになるにはどうしたらいいんだろう?」って考えたときに、「ひとりでは幸せになれない」っていう結論になりました。なぜなら、まわりの人たちに貢献して、その人たちが幸せになるのを見るときにこそ、より深い幸せを感じる自分に気づいたからです。何よりも大事なのは、人生を楽しむこと。幸せを感じること、それに尽きると思います。

 

若い時は、誰かに何かを与えたときに見返りを求めてしまってて、「これは本当に愛だろうか?」と悩んでいました。その結果、「一番幸せな人は、誰かに何かをしてあげられているだけで、満足できる人じゃないかな」と思うようになりました。そういう人は奉仕しているときにすでに幸せになっているので、見返りを求めません。もしも見返りがあったなら「もうけもの」みたいに考えられるわけですね。「無償の愛」というか、両親が子供たちに持っているような愛に近いです。

 

同じような言葉で、アインシュタインの「人の価値とは、その人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる。(The value of a man should be seen in what he gives and not in what he is able to receive.)」があります。この言葉を、サブタイトルにすることができたら最高ですね。

 

座右の銘や好きな言葉は?

石坂氏: たくさんありますが、最近感じていることを一つ。「失敗は存在しない。あるのは部分的な成功だけである。」 世界中のスタートアップで成功している人、大きなことを成し遂げている人、組織のリーダー、尊敬する人、素敵だと感じる人などいろいろな人と話しているうちに、人を幸せから遠ざけている、成長から遠ざけているものは何かと考えているときに出来上がった言葉です。

 

ピカソのこの言葉が回答にもなるかなと思っています。こういうマインドがあれば、どんな時も前向きに生きることができるかなと思っています。

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ー思わず時間を忘れて夢中になるものは?

石坂氏: 人が笑顔になったり、いい意味で驚いたり、前向きになったり、行動がいい方向に変わったりすることを想像して、プレゼンテーションを準備したり、いろいろなモノを企画・提案したりするのが好きですね。聴く人たちや仕掛けられた人をどうやったら喜ばせ、驚かせたりすることが考えていると思わず時間を忘れてしまいます(笑)

 

あとは「ブリテンズ・ゴッド・タレント」というテレビ番組にはまっています。たまたま機会がないだけで、世の中に認められらなかった人がいっぱいます。その人たちの才能が開花していく姿、そのドラマを見るのがすごく好きです。何回見ても感動します。

 

最近だとフィリピン人のMarcelito Pomoyさんが好きですね。

https://www.youtube.com/watch?v=1JaJMXDsRWM

彼はストーリートチルドレンでした。「親を探したい」ということで、自分に与えれた「歌」という才能を使ってこの番組に出演しました。フルバージョンであるこちらの動画((5) Marcelito Pomoy - The Prayer (Celine Dion and Andrea Bocelli) LIVE on Wish 107.5 Busvia Torchbrowser - YouTube)は1000回以上見てます。

 

正直、自分にはそんな才能がないことは知っています。でもそういう人たちを支援することだったら、自分のいま持っているポジションとか人脈でできる。そういうことを考えているときにすごくワクワクします。

 

実は、私自身が多くの方からの支援を今まで頂いてここまで来たということがあります。保育園、小学校の時、私は本当に普通の子供で、成績がいいわけでもなく、偏差値は40でした。自信がなく、コンプレックスを沢山抱えていました。そんなわたしが、両親から色々な教育の機会を与えられて、義理のお父さんからアドバイスをもらったりとか、先生や友人たちからの影響を受けて、ここまで来ることができました。

 

人は「自分をどう見るか?」がすごく重要だと思っていて、「Know your self」という言葉を大切にしています。実は私はクリスチャンなのですが、私が行っている教会の、「I am a child of God」という歌がすごく好きです。わたしにとっては最強の歌です(笑)。

 

わたしはクリスチャンとして、神が全知全能であると信じていることが前提にあるんですが、この歌は「私は神の子、つまり子供はいつか大人になり、いつかはそんな全知全能の存在に自分もなれる可能性をもっている存在」という希望を与えてくれます。それって「本当にすごい」希望だと思いませんか?

 

 ーミッションは何ですか?

石坂氏: できるだけ多くの人々の喜びと悲しみを知れるようになることです。そしてもっと世界のことを、人々のことを、多面的な情報を得ることです。なぜならそれができればもっと良いソリューションが提案できるからです。

 

すべての人の気持ちが分からないから独り善がりになってしまったり、すべての情報を持ってないから争いが起きてしまうのかなと思ってます。

 

できるだけ多くの人々のこと知り、与えられた才能を最大限を使って、人々の幸せに貢献することがわたしのミッションです。

 

ーミッション達成に向けて取り組んでいることは何ですか?

石坂氏: 4つほどご紹介させてください。まずは留学アシスタントですね。「留学チャンネル」というYou Tube番組を持っている会社の顧問をしています。

https://www.youtube.com/channel/UCxkGGCqt29RafHkcUp1518w

より多くの人たちが留学という手段を使って、新しい本当の自分を探したり、視野を広げる機会を提供することを目的としてます。わたしの母校であるBYUは本当にコストパフォーマンスが良いのでお勧めです。もっと日本人に知られても良いんじゃないかと思ってます。

 

次はシアトルに留学している学生向けに提供している、「人生設計」フレームワーク「9box」です。これは自己分析ツールで、少しでも彼らの役に立てればと思っています。シアトルの学生団体に属している学生さんや、キャリアイベントで集まってくれた学生さん向けにメンタリングもしています。

 

いまは次世代育成の為のNPO法人をシアトルエリアで立ち上げようとしていて、同じような志を持っている人たちがマイクロソフト、アマゾン、メルカリ、そしてビルゲイツ・メリンダ財団など、企業の枠を超えて協力し合っています。

 

最後はこれは仕事でもありますが、ソフトウェア開発者を支援することです。彼らがより良いものをつくることでより良い世界をつくるという夢に向かって取り組んでいます。

 

仕事が自分の人生におけるミッションと同じというのは本当にラッキーだと思っています。まさしく、キャリアにおけるIKIGAIフレームのIKIGAIが仕事になっていると思っています。

 

ーいままで経験した中での一番の困難は?

どのように乗り越えましたか?

石坂氏:弟が脳腫瘍ガンにかかり、亡くなったことです。1年半から2年間の間の闘病生活で弟は本当によく頑張りました。

 

はじめて自分にとって最も身近な家族を失うという経験だったので、受け入れるのが本当に難しかったです。また段々とは病気に侵されて、半身不随になったり、目が見えなくなったり、耳が聞こえなくなったりしていく姿を見るのが本当につらかったです。

 

「あれ?クリスチャンとして信じているのに助けてくれないの?」っていう怒りの気持ちが湧いてきました。そこで人生で初めて近くの森に行って祈り、自分の気持ち、思いをすべてぶつけました。

 

そのときに「今まで信じてきた信仰は正しく、このまま信じ続けて大丈夫だという確信」を知識や、論理ではなくて、なんとも言葉では表現できない方法で心の内側から得ました。するといつの間にか怒りが消え、心が平安や愛で満たされました。誰か他人の信仰とかではなく、自分自身の信仰を得ることができました。だからすべての人が否定したとしても、わたしの信仰は変わりません。それがいまのわたしの原点になっています。

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マイクロソフト米国本社で働く中での困難は?

石坂氏:まずは英語ですよね。もう本当に厳しいです(苦笑)。25-26歳で初めて留学しただけなので、いまだに言語の壁は常に感じてます。

 

次は自分の視野の狭さ。知らないことが多すぎることを感じます。わたしの担当しているサービスは世界140ヵ国で利用されています。

日本とちょっとアメリカを知っているだけのわたしのとっては知らないことばかりです。たとえばそれぞれの国の歴史、文化、習慣、行事など、数え上げたらきりがないです。もう何を知らないのか分からない状況です(苦笑)。

 

あとは周りに能力が高い人がいっぱいいることです。そういう人たちはハーバードやスタンフォードを卒業していて、能力はもうピカイチです。地頭もいいし、英語でプレゼンさせたらきれいな英語を話すわけですよ。ほれぼれしてメモしたくなるような。そういう人たちを見て、自分はまだまだなんだと感じます。

 

でも同時にこの人たちの能力を活かすことができたら、そして彼らのいい部分から学んで自分がさらに成長できたら、「どんな未来を作れるか?どんな新しい自分にアップデートできるのか!?」というワクワク感も感じてます(笑)。

 

前向きな考え方をするという意味で、いい模範はマイクロソフト社長のサティアですね。過去、わたしたちのAzureという製品がまだ数%しかマーケットシェアがなかった頃、その報告を聞いたサティア・ナデラ社長は「That's good news!」と言ったんです。みんな「えっ?」という感じでした(笑)。彼は「いま数%しかないってことは、もう伸びるしかないじゃん。それだけ伸びしろがあるってことだね。」って続けました。

 

「できないことはこれからできる可能性があること」と気づかせてくれるとても良い経験になりました。マイクロソフトには会社の文化を意味するいくつかの指針があるのですが、そのうちの一つがGrowth Mindsetです。人は成長できる存在、常に学び続ける姿勢、前向きに物事を捉えるという意味なのですが、リーダー自ら手本を示してくれているケースだと思います。

 

ー成功の秘訣は何ですか?

石坂氏:成功の定義は自分で決めるべきものだと思っていて、だから自分が幸せかどうかが、成功かどうかを決めるって思ってます。でも実際は、外部が決める成功に踊らされている人があまりにも多いと感じています。

 

成功の秘訣は、まず自分の成功を定義すること、つまり自分にとっての幸せが何かを知ること、次にそれについて明確なビジョンを持ち行動すること、そして繰り返し自己分析をして自分の目指す方向に進んでいるかをたびたびチェックすることです。

 

それを日本でやるのか、世界に出てするのかで、本当の自分を発見できるヒット率はだいぶ変わってくると思うんですよ。海外に出て色々な国の人たちと話し、ともに時間を過ごすことで自分を試す、知らなかった自分、つまりジョハリの窓で言うところの「未知の窓(誰からもまだ知られていない自己。おそらくこれは神のみぞ知る自己ということですね)」を知るチャンスを広げることができます。

 

まだ何をやりたいかわからなくても海外で学んだり、今まで体験したことがないことをしていく中で見つけられると思います。だから留学は成功するための自分探しの手段としてとても良い機会だと思っています。

 

日本も素晴らしいですが、世界を見渡すと人口でも、インターネットを含めた情報量でも日本語は数パーセントしかないことも事実です。世界中のことをできる限り知ることによって、自分のことも同じように知ることができると思います。これは表裏一体の関係にあると思います。

 

ー次世代の若者へのメッセージ。

石坂氏:大好きで伝えたい言葉が2つあります。

1つ目は最も裕福なアフリカ系アメリカ人と呼ばれているオプラ・ウィンフリーの言葉。アメリカの人気トークショー番組のホストをつとめる彼女が卒業生に送ったメッセージがこちらです。

https://www.youtube.com/watch?v=hr-KYt-Bfa8&feature=youtu.be

 

これをまず見てください!これがすごいんですよ。そしてこの動画の中で、最初に言うのが、「なによりも大切なことはおのれを理解すること」です。これが大事です。そしてその次のアドバイスも胸が熱くなるものがあります。

 

2つ目はわたしの集っている教会のリーダーの一人で、今は他界された、ボイド・K・パッカーの言葉。 「人生における選択」というお話しです。もうこれがすべてです!

 

それは、もし自分が善良で優れた仕事をしていれば、最終的には多くの人々から称賛を受け、高い収入が得られるはずだと思い違いをしていることです。また、成功には、本質的な要素としてあり余るほどの富と名声が含まれるている、多くの人が思い込んでいる点です。この世の中は、そのような前提の下に動いているようですが、その前提はまったくの偽りです。・・・有名か無名か、富か貧困か、といった選択が間違っている、ということをわたしたちは一体いつになったら悟るのでしょうか。私たちが選択の基準としなければならないのは、それが善か悪かという点だけなのです。そうなると、問題はまったく別のものになります。このことを理解することに至った人は、物質的な事柄、つまり、物質的な物の有無で自分が幸福か否かを決めなくなります。神はわたしたちに自由意思をお与えになりました。もし、人生で最も大切な選択が何なのかが分かれば、成功できるのです。・・・私はふたつの目標を提案したいと思います。ひとつ目は、何をするにしても最善を尽くそうという目標です。・・・ふたつ目の目標は奉仕です。

(聖徒の道1991年6月号「人生における選択」からの抜粋)

 

つまり幸福と成功を決めるのは、富や名声の有無ではなくて、 より良いもの追い求めて最善を尽くす姿勢と、まわりの人を幸せにしようとする行い(奉仕)です。

言い換えると、他人の幸せと真の成功のために、自分に与えられた才能をできる限り伸ばし、活用して、貢献しているかが、成功の指標です。

ビル・ゲイツのようにたくさん才能が与えられている人と同じことが求められているわけではなくて、「あなたの才能を使って、どれだけ世の中の人の幸せのために尽くしましたか?」が問われているということを知って欲しいと思います。

 

この言葉が大好きな理由は、あらゆる年齢、国籍、性別、異なる才能や資源を持った人にも当てはまる原則ということです。実は自戒の念も込めて、この言葉を選びました。

 

地位や名誉、いくらお金を稼いでいるのかなどを重要な人生の成功のスコアカードとするのではなく、このシンプルな2つの問い、「自分の才能を最大限に伸ばしているか」「与えられた資源や才能を使って最善の奉仕をしているか」を自分の人生のスコアカード、指針にできる人になりたいと思っています。

 

まとめ:

人生におけるスコアカード=

①自分を知り、才能を最大限に伸ばしているか+

②与えられた才能や資源を使って最善の奉仕をしているか

 

次回、「財務分析①」につづく。